漂流記 (渋谷・1985)

みずみずしい思い出が 手にとるたびによそよそしい それほど遠く流されたのだ 夢の外側を切り売りしながら 仲間たちの歓声が 昨日の色をした空に舞い上がり ぼくは初めて明日を探す おもちゃ箱を...

ポケットに手を入れて

どこまで透明になれば 風になれるのか いつまで目を凝らせば ほんとのことが見えてくるのか 昨日を過ごした木陰の匂いが ぼくを明日に向かわせるので 少女の笑顔が 弾けるように夏を夢みる ぼく...

公園通りで(ぼくらの80年代)

バブル時代 新人類 だからなに? 大人がどんなレッテルを貼ろうと ぼくらの大切なものは 変わりやしないんだ 今日も明日も ひたむきな心はひとつ 仲間たちの歓声 恋人の笑顔 振り向けばいつもそこにある ...

夏休みのキャンパス

夏休みのキャンパスに 響きわたるコーラスの声 並木道の坂を上るぼくに問いかける この先にあるものはなに? 学問、恋、未来 それとも失意 挫折 夏休みの学生街は 漂流する巨大な船 古本屋も雀荘も定食屋も...

空の青さを信じていると

空の青さを信じていると うつろな夢にさえいのちがある 夏を告げるものたちの手で 生み出されてゆく健やかな今日のように 海、街、樹…… 彼らはとりとめもなく動きつづける ぼくが振り返り 時に目を凝...

青春漂流

思い出は波紋のように 微かなざわめきを残して消え去ってゆく ぼくは大都会を漂流するちっぽけな小舟 そこに何の存在意義が?と問いかける午後 陽炎の立つアスファルト いつもの交差点 頼りなく歩むこの道の先...

形 十七歳の地平

昨日の空が青すぎるので ぼくはまだ今日を見つけられない 明日の海があんまり深くて ぼくは今日を捨てられずにいる 思い出が形を捨てたがるとき 愛は形を欲している 樹をまね 歌をまね 愛はぼく...

渋谷駅前 1984

途切れることのない 若者たちの流れ ひとり立ち止まるぼくは 群れからはぐれた無力な獣 破れかけたスニーカー ポケットの文庫本 傷つきやすい幼い心 それがぼくのすべて どこから来たのか どこへ行くのか ...

めぐりあい

香りのない風が ひととき 今日を舞い上がらせ きみの笑顔が水になる 哀しみたちの立ちすくんだまま 大地が空が 沈黙に渇き まぶしさを持ち きみは大人になってゆく はかなく そしてすこやかに...
文学雑談

詩を書いていた頃の思い出

僕が詩を書いていたのは、十六・十七歳の高校生の頃です。学校では文芸部というのをやっていましたが、要は毎日放課後に集まってアニメの話をダラダラとだべっているだけで、非常にいいかげんな活動でした。でも仲間の顔を見てくだらないことを喋っているの...
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